安野モヨコ作『監督不行届』

オタクの教祖・庵野秀明との結婚生活を安野モヨコが描く実録コミックエッセイです。作中の序盤に「あたしに『オタクの嫁』がつとまるだろうか」なんて言っていますが、色んな意味でけっこう似た者夫婦なのでとても幸せそうな結婚生活です。

安野モヨコは漫画界の中でも大人向けオシャレ漫画みたいなジャンルの作家ですが、やはり漫画家である以上オタク濃度は相当濃いはず。そして、庵野秀明はさすがと言いたいほど見事にオタクっぷりを発揮しています。庵野が仮面ライダーの変身ベルトを購入したのはいいけれども、ウエストが太すぎてベルトが閉まらない、そこで嫁の安野がベルトを持ってあげて、子供のように鏡の前で変身ポーズを繰り返すというような描写に微笑ましいような呆れてしまうような笑みがこぼれてしまいます。

どんな意図で言ったのかはわかりませんが、宮崎駿監督が庵野秀明に対して「十字架を背負っている」と語ったのを聞いた事があります。おそらく青春時だけでなく人の葛藤を描かせたら右に出る者はいないと思われる庵野と、人の明暗をエグいほど描く事もある安野は似た者夫婦です。

この漫画はコミカルでライトなギャグ漫画風に描いていますが、人の心の深淵を知っている二人だからこそ上手くいっているのではないでしょうか。だからこそ、二人は仲睦まじく、摩擦を避けてほんわかした生活を送れるのではないかと思います。結婚実録エッセイはけっこう読んでいてムズ痒くなるものも多いのですが、この作品は言葉に言い表さない二人の愛情を感じてほんわかした気持ちになれるので、おすすめです。